初回の記事を何にしようか迷ったんですが、嫁の愛機だったCanonのDEMIにしてみます。
昭和生まれの方ならご存知でしょうが、ハーフサイズカメラってのがありましてフィルムを半分使って2倍撮れるっていうお得な商品でした。
勿論、プリント時には倍に伸ばすので画質は荒れるんですが、L版程度(昔はサービス版って言いましたよね?)だったら鑑賞に十分耐えるので当時は大変ヒットしたようです。考えてみればハーフサイズって言ってもデジタル一眼レフで言うと「APS-Cサイズの素子」とほぼ同じ面積なのでそれほど劣化するとは思えませんが、フィルムの時代には敬遠されたもんでした。
そして、36枚撮りのフィルムを入れたら72+αカット撮れるので、なかなか現像に出せないんです。あまり写真撮らないご家庭では一本のフィルムに一年以上かかって春夏秋冬各季節が入ってるなんてのも多く見受けられたとか。昔はここぞって時にしか写真撮らないのでなかなかフィルムが減らないもんでしたが、フィルムもDPEもそれなりににコストがかかるので、一時は結構なブームになり、OlympusのpenやRicohのオートハーフなんて機種が大ヒットしました。
で、そんなハーフブームの時に登場したのがCANONのDEMIです。
後発故かとてもよく練られた商品でして、デザインがとても魅力的で操作も簡単。
中でもデザインは本当に上手く纏められていて、露出を決めるのに太陽光を受ける場所(セレン光)が目立つものの、クラシカルかつモダンなデザイン。軍艦部(?)の「DEMI」って書体もシャレオツです。
少し前の話ですが旅行先で人に撮ってもらうときに渡すと「これはデジカメですか?」なんて訊かれることもあるほど現代にも通じるデザインでした。
操作は全て機械式で電気なんて露出図るのに太陽光(セレン式)使うぐらい。電池も要りません。シャッター速度と絞り値が連動したダイヤルを明るさに合わせて回していくだけという簡単にして実用的な仕様。明るいとシャッター速度が早くなって絞り込まれ、逆に暗いとシャッター速度が遅くなって絞りが開いていくという単純明快さ。記念写真にはピッタリで割り切りが潔いです。フィルムカメラでは大切なファインダーも、明るく見やすくて、私見ですがハーフサイズカメラの中では一番出来がいいと思います。
結婚前はベトナム旅行へ持って行ったりしましたが、現地では壊れる事も無く、またハーフサイズならではの手軽さでバンバン写真を撮ってくれました。
当時のベトナムはDPE屋さんが乱立していて、撮り終わったらすぐに現像に出して翌日受け取れたので、持って行ったカメラの中では一番の稼働率でした。フォーカスやら露出やらは結構アバウトですが、焦点距離の短さやカラーネガフィルムのラチチュードの広さが幸いして多少失敗しても鑑賞に堪えますし、何より昨今の「フィルムの味」なんてのはハーフサイズのほうが顕著な気がします。
ただ、撮るのはいいのですが、フィルムならではの「巻き戻し」のクランクが非常に小さくて指が痛くなります。まあ、撮影自体には影響しないうえに、このカメラでは仕事みたいにバンバンフィルム交換しないんで、ご愛敬と言ったところでしょう。迅速にしなきゃならない作業でもないですからね。
旅行では大活躍だったんですが、結婚して暫くあまり使わない時期があったときに、へそを曲げたのかまったく動かなくなってしまったので、今は無き阪神百貨店の修理屋さんで治してもらいました。それからは快調だったんですが、子供が生まれてしばらく使わない間に再び症状が再発したらしく、残念ながら現在は静態保存状態です。
フィルム高騰の今、ランニングコストを抑えられるハーフサイズは大変貴重な存在です。人気のOlympusPENなんかに比べて中古価格もそれほど高くないので、見かけられたら手に取ってみては如何でしょうか?
飽きるまでは壊れずにいてくれると思いますよ…